「大型ディスプレイ&デジタルサイネージ総覧2016」特別寄稿
エアウィッチ
30秒で組立て可能な空中映像(空中ディスプレイ)表示キット
AirWitchチームリーダー
はじめに
ディスプレイから飛び出したバーチャルアイドルが、ステージでパフォーマンスをしてくれる。彼女に声をかければ手を振り返し、彼女が差し伸べた手に触れると、少し頬を赤らめて喜んでくれる。空中映像は、ディスプレイという物理的な壁を超え、リアルとバーチャルの境界を曖昧にしてくれる。そして、ユーザーとバーチャルとの間に新しい対話の形を生み出してくれる。
そんな空中映像が、もっと気軽に、お手軽になれば、世の中もっと楽しくなる。SFに出てきたようなワクワクする世界がきっと実現するはず。そんな思いを胸に株式会社コトは、誰もが、自宅で、気軽に空中映像を楽しむことができる組立式空中映像表示キット「AirWitch」 を開発した(特許出願中)。
私たちの仕事
株式会社コトは企画開発会社である。
「枯れた技術の水平思考」を世に知らしめた故横井軍平が1996年に設立。人々の心がより一層輝き、豊かになるための楽しさの原石を見つけ、磨き、光り輝かせて世の中に提案する。それが私たちの仕事であり、使命である。そんな私たちが見つけた次の新しい原石は空中映像だった。
組立式表示キット「AirWitch」とは。
「AirWitch」は、「気軽に遊べる空中映像」というコンセプトをベースに開発した空中映像表示装置のDIYキットである。組み立て時間はわずか30秒。手持ちのスマートフォンがあれば、いつでもどこでも空中映像が楽しめる。
セットアップが繊細で、時間がかかる従来の空中映像表示装置とは異なり、 「AirWitch」では可能な限りシンプルにコンパクトに筐体設計することで、 マニュアル不要で誰でもセットアップができる装置を実現可能にした。
装置がシンプルであればあるほど、装置らしさは消え、ユーザーは純粋にコンテンツを楽しむことができる。ユーザーの中で芽生えた「コンテンツを楽しみたい」という気持ちを阻害することなく、絶妙にプロデュースすることが最高のエクスペリエンスを提供することにつながる。そのためにも、映像表示装置が足かせにならないよう、出来る限りシンプルになるよう試行錯誤を繰り返した。
ひつじタッチデモ
本体構成(以前のversion)
「AirWitch」の特徴
「AirWitch」を展示会などで披露すると、必ず驚かれることがある。
スマートフォンを利用しているにも関わらず、実用に耐えられるほどの明るい空中映像が楽しめること。そして、装置の組み立てが非常にシンプルであること。この2点である。
「AirWitch」の空中映像表示技術には、宇都宮大学山本裕紹研究室と合同会社SNパートナーズが共同開発したpAIRR技術(*1)を応用している。pAIRR技術は、従来の技術である再帰性反射シートとハーフミラーで構成される結像技術を更に進歩させた。
従来の再帰性反射シートとハーフミラーで構成される結像技術では、スマートフォンに映し出された映像を空中表示させたとしても、表示映像は暗く、しかも解像度が低くて実用に耐えられるものではなかった。
pAIRR技術ではスマートフォンの液晶画面から発する光を効率良く反射させることで、スマートフォンの限られた光量でも明るく実用に耐えうる空中映像を表示させることに成功した。
また、再帰性反射シートとハーフミラーで構成される結像技術は、こなれた技術であり、複雑な筐体セッティングを必要としない。表示映像を最適化するための基本的構成は存在するが、その基本構成から多少外れても問題無く空中映像を表示することができる。このシンプルで簡便な結像技術によって、わずか30秒で組立てることができる「AirWitch」の筐体設計が実現した。
MakerFaire2015での様子
空中映像のポテンシャルの高さ
2015年8月に開催されたMakerFaire2015では、AirWitch for iPhone、AirWitch for iPadの2種類を出展した。空中映像というキーワードを聞いて、理解できる人々はそう多くない。そのため、空中映像とは何かを一目で理解してもらうべく、空中映像の特徴を凝縮したデモアプリを作成。会場では、道行く人々の多くが柔らかな不思議感漂う空中映像に目を奪われ、立ち止まり、デモに触れ、笑顔を見せた。この時、空中映像が世に与えるインパクトの大きさと新たなエンターテイメントが生まれる瞬間を目の当たりにした。
空中映像には老若男女を笑顔にするパワーがある。何気ない日常に「楽しさ」というエッセンスを加えてくれるパワーがある。これが、我々にとって初めて空中映像のポテンシャルの高さを認識した瞬間である。
「遊べるデジタルサイネージ」複数同期という試み
空中映像は一つでも十分楽しめるが、複数台が連携すると楽しさは倍増する。設置が手軽でコンパクトな「AirWitch」筐体の特徴を生かし、「遊べるデジタルサイネージ」をコンセプトとした「AirWitch」複数同期バージョンを東京ギフトショー2016で展示した。
この展示では、商品を販売促進するためのデジタルサイネージツールとしての可能性を模索するべく、弊社オリジナル製品のPIPEROID®キャラクター用いたスロットマシン"PIPEROID® SLOT"を展示した。
3台の「AirWitch」上に表示されるPIPEROID®キャラクターを指でタッチして、3台全ての絵を合わせるスロットゲームである。全ての絵が揃うと、「Congratulation!!」のメッセージと共に祝福サウンドが流れる。ブース来場者の方々にスロットをして頂き、当たりが出るとギフトショー限定プレゼントを提供した。
来場者は、PIPEROID® SLOTを目にすると足を止め、映像が宙に浮いていることに目を疑った。そして、試しに映像に触れてみれば、3台全ての「AirWitch」が動きだすことに驚き、周りの目も気にせず何度もスロットを楽しんでいた。大人達がPIPEROID® SLOTに夢中になる姿を見て、遊べる空中映像として自然に受け入れられていることに嬉しさと手ごたえを感じた。
PIPEROID® SLOT
中央のキャラに触れると他2体が同期してスロット開始
Giftshowにて
PIPEROID®販促ツールとして展示
最後に
空中映像には、人を虜にするだけのエンターテイメント性を兼ね備えている。見る人全てを不思議な世界へといざない、笑顔にする力をもっている。
株式会社コトは、今後も「どうすれば空中映像がもっと楽しくなるか。どうすれば少しでも長く遊んでもらえるか。」 にフォーカスを当て、人々の心に一輪の花を添えるような、心を豊かにするコンテンツを開発していきたいと思う。
同時に、空中映像という表現メディアがもっと手軽になり、クリエイター達が気軽に参入できるようなフィールドを作ることで、空中映像メディア自体がこの世に市民権を得られるような、そんな世界を築き上げていきたいと願っている。
宇都宮大学 山本裕紹研究室と合同会社SNパートナーズが共同開発した空中映像表示技術。