「大型ディスプレイ&デジタルサイネージ総覧2017」特別寄稿


空中結像 -スクリーン不要のバーチャルリアリティ-

空中結像における楽しさの重要性

「空中結像」としての興味を引く外見。「触れる」という能動的な体験。そして、触れた結果「楽しい」という経験と感情は、お客様(体験者)の頭の中でポジティブなイメージを植え付ける。 これが、単に空中結像が表示されていて、映像を見るだけではお客様の心には何も響かない。「見る」から「触れる」という行為へ誘導し、直感的に「楽しい」と感じてもらえるコンテンツデザインでなければならない。 
「CMを科学する」という書籍の中で、商品やブランドの情報を長期記憶に残すための方法として、五感を刺激して、五感に訴えかけるようなメッセージにする方が良い、というようなことが述べられている。 五感への刺激に加えて、空中結像による驚きと楽しさ、そして「知的好奇心」を刺激することで、更にお客様の心に響くメッセージとなり得る可能性を秘めている。

組立式空中結像お試しキット

これまで裸眼で見える空中結像、スクリーンレスと実在感について説明してきたが、この空中結像を気軽に試せる環境を株式会社コトが提供している。㈱コトは、空中結像を手軽に試すことができるキット「AirWitch」を開発。2016年8月に数量限定で販売した(価格はiPhone版が1万円、iPad版が3万5000円*各税別)。
AirWitchとは、スマートフォンに映る全てを空中結像化してくれる組立式キット。キットにスマートフォンをさし込むだけで空中映像化できる。しかも、毎年スペックが向上するスマートフォンのセンサーを上手く利用することで、複雑なセンサー類を用いることなく、空中結像化したキャラクターにフィンガータッチできるようなインタラクティブなコミュニケーションを実現できる。 
アプリを準備すれば、いつでも空中結像コンテンツを用いた実験が開始できるという簡便さが好評のようで、現在既にSOLD OUTとなっているが、当書籍が発刊される時期には再販予定である。(AirWitch Official Website: http://airwitch.jp/)
 
追記:AirWitch for iPhoneはAirWitch STOREにて再販開始( https://airwitch.official.ec/ ) *2017年7月21日現在

最後に

空中結像は、VR、AR、MR、SRのような没入感高く、刺激の強い表現力は難しい。 
しかし、ブログがマイクロブログに変化し、文字数制限が俳句的な新たな表現を生み出したように。 6秒動画が生まれ、動画における時間制限が新たな表現を生み出したように。メディアが変わると表現手段も変化し、新たなコンテンツが生まれる。空中結像としての特徴を生かし、空中結像でしか味わえない、空中結像ならではのコンテンツ(体験)を提供していきたいと思う。 

[参考文献] 
・http://www.jp.playstation.com/psvr/ 
・https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens 
・http://vrinside.jp/news/vr-ar-mr/ 
・横山隆治 CMを科学する ―「視聴質」で知るCMの本当の効果とデジタルの組み合わせ方 No.965, 974
・境治 拡張するテレビ ー 広告と動画とコンテンツビジネスの未来


*1 pAIRR技術:
宇都宮大学 山本裕紹研究室と合同会社SNパートナーズが共同開発した空中映像表示技術。
及びPIPEROID ®は株式会社コトの登録商標です。

大型ディスプレイ&
デジタルサイネージ総覧2017
(2017年7月6日発刊)にて掲載。